Dimensional Sniper

将棋 / 研究 / 青嶋未来

角換わり新型同型 01

半年ほど前、角換わりの新型同型を「千田流△6二金~△8一飛」というタイトルで01~09まで検討していました。

最初の記事は下です。

honey1728.hateblo.jp

この記事を書いた当初は「△6二金~△8一飛」の形を先手番が採用すると、千日手模様になり先手番としては面白くない、という結論に向けて検討しているイメージでした。

しかし、今は▲5八金型への△4二玉型での後手の仕掛けが多くの形で利くということで、先手番でも▲4八金と構える将棋が増えてきました。

そこで再度この形を考えてみよう…と思うのですが、手の付けどころが分かりませんので、気になったプロの実戦を紹介していく形式を取ろうと思います。よって思い出したように時々更新するシリーズになりそうですが…

 

最近衝撃を覚えたのは、村山-畠山鎮(竜王)。

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いきなり▲4八金型じゃないやん…と思われそうですが、「▲4五歩の位取りには後手は右玉に組み替えれば打開が難しい」と先述した記事のシリーズで書いていました(千田流△6二金~△8一飛 02 - Dimensional Sniper)。

基本的に後手は△6二金~△5二金を繰り返すだけですから、多少の形の違いは似たようなものです。本譜の先手の金は5八→6八→6九と動いています。

 

実戦は、以下△6二金、▲7九金寄、△4一飛、▲8八銀、△8一飛、▲7七桂。

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打開が難しそうですが、パンツを脱ぎすててしまうのが好手。

ここで△4九角と反撃に出ましたが、▲6五歩、△同桂、▲同桂、△7六角成、▲7七金、△7五馬、▲6八飛が好手順。

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手なりに駒を進めて、後手は相当受けにくい形。後手が右玉にして徹底待機を狙う作戦は決定打が出ず細々と指し続けられてきましたが、これは相当有力なのでは?と思います。

 

※5/13追記

記事を書いた後、丸山-糸谷(竜王)でも似た構想が出て先手が快勝しました。

対▲7七飛戦法 02

前回の続きです。

▲6六歩型の変化。

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先手としてはこちらの変化の方が良いようです。評価値は-300~-400ほど(浮かむ瀬)。

以下△3一角、▲9六歩、△7二銀、▲9七角、△8三銀、▲7七桂で下図。

尚、△7二銀では△7二金も有力です。

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▲9六歩のところ▲6七銀では、△7二銀、▲9六歩、△6四銀、▲9七角に△8五飛で7五の地点が受かりません(下図)。

この順も、飛車交換・大駒交換は後手に利があるという判断がある故に成立する手です。△7二銀型が飛車の打ち込みに強い形。

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よって先手は▲7七桂~▲9六歩~▲9七角を急いで二番目の図になります。これなら△6四銀ならすぐに▲6五歩と追い返せる理屈です。

▲7七桂以下、△8四銀、▲6五歩(次の△6四銀を防ぐ)、△9四歩、▲3八玉と進んで下図。

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後手は手を入れる場所も難しいので、△9五歩と仕掛けます。以下▲同歩、△同銀、▲7四歩、△同歩、▲5三角成、△同角、▲9五香、△同香はほとんど一本道か。

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角香と銀銀の交換。▲9六歩には△7五歩で飛車の行き場所が難しい。後手からは△2四香が狙いの一つ。

評価値は-450ほどで後手良し。とはいえ少しのミスで一気に互角に戻る変化も多いので、注意深い指し回しが必要なのは確かです。

 

ざっとまとめると、対▲7七飛戦法のポイントは、飛車先を換えること・△3一角+△6四銀+△8四銀で7五の地点を狙うこと・飛車交換は恐れないこと、の三点でしょうか。

 

以上、評価値や進行を見るとかなり心強い結果となりました。▲7七飛戦法を許さなければ、4→3系統の将棋にされることはもうありません。やりました。笑

 

 

 

さて、私は記事をまとめて書いて予約投稿している場合がほとんどなので、記事を書いている時と更新されるタイミングにはずれがあります。

実は、記事を書いている今現在は、コンピュータ将棋選手権が行われている最中です。大会後にまた強いソフトが公開されるのかな…と期待しつつ、そして普段無料で使わせて頂いている感謝を込めて観戦しているところです。

現状(5/2時点)で公開されているものの中でも、浮かむ瀬よりSilent Majority1.25の方が強いという話もありますね。私から見ればいずれにせよ神の領域ですから、時間を掛けて読ませる分には大差ないと思っていますが、新しいソフトが公開されればそちらも使ってみたいところです。

対▲7七飛戦法 01

ツイッターで対策を見たことがある形ですが、細かい部分を忘れてしまったのでメモしておきます。

 

▲7七飛戦法の出だしは下図。

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普通によくある4→3戦法に合流させるのもありますが、咎めに行きたいところ。

上図以下△8六歩、▲同歩、△同飛、▲7八金、△8二飛、▲8七歩、△4二玉、▲7五歩、△3二玉、▲7六飛、△5四歩と進めて下図。

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後手は飛車先の歩を換えてしまうのが工夫。これは▲8六飛の飛車ぶつけへの対策ができていないと指せない手です。

上図でいきなり▲8六飛は、△同飛と応じておいて7五と8六の歩がまとめにくい形(後手は△5三銀~△6四銀のようにして狙う)。浮かむ瀬でも技巧でも最終的には-300以上に振れます。この順が成立しないというのが後手としては非常に大きなポイント。

ただ、現実的にはいい勝負という気もしますが…。先に△7二銀(金)として交換を拒否する形を用意しておくのもあるかもしれません。

 

上の変化をクリアしたとして、以下後手は▲4八玉、△4二銀、▲6八銀、△5三銀として引き角+△6四銀から7五の歩を狙います。

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先手は7五の地点を補強したいところ。▲6六銀型にするか▲6六歩とするかで違う展開になります。

ちなみに、上図で▲7四歩は-600ほど後手に振れます(浮かむ瀬)。以下△同歩、▲同飛、△6四銀、▲7六飛、△3一角から△6二銀~△5三銀上などとどんどん盛り上がって後手良しのようです。

 

今日は▲6六銀型を作る手順から考えてみます。

上図から▲7七銀に△7二銀が骨子の一手。

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△6四銀・△3一角・△8四銀で単純明快に7五の地点へアタックするのが狙い。先手も▲9六歩~▲9七角で一枚足して対応したいところですが…

以下▲6六銀、△6四銀、▲7七桂、△3一角、▲9六歩、△8三銀、▲9七角、△8四銀。

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こう進むと角頭の弱点と飛車の狭さが痛い。▲7七桂は△8五銀を防ぐために必要な手です。

▲7四歩には△同歩、▲同飛、△7五歩なので先手は指す手がない。▲3八銀、△9四歩、▲3九玉、△9五歩、▲同歩、△7五歩の進行は-600ほど(浮かむ瀬、技巧)。

 

▲9六歩~▲9七角ではなく、▲5六歩~▲5七角で7五の地点を補強するのも考えられる手順。

即ち▲9六歩のところで▲5六歩と突く(下図)。

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この手には△8三銀、▲7九角に△8八歩が絶妙手。

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▲同角なら△8四銀。▲同金にも△8四銀と出て、▲5七角には△7五銀右が一閃。

以下飛車を残せば△8四角が刺さりますし、角を残せば△6八飛が痛い。ソフトらしい鮮やかな手ですね。

早繰り銀いろいろ 02

前回の続きです。△4五歩の変化。

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危なっかしい手ですが難しい変化を内包しています。評価値は+300ぐらい。

先手は▲5五銀と出たいところ。以下△同銀、▲同歩に△3五角が気になる手。

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△3五角のところは△4二玉も一局。先手も▲7七銀と追随するか、積極的に▲4四銀もあるでしょうか。ただここで△4二玉を選ぶなら、△4五歩のところで△4二玉を選ぶ人の方が多い気がします。

△3五角は馬を作られるので嫌な手ですが、▲6九玉、△5七角成、▲6八金、△4七馬、▲7八玉が落ち着いた手順。

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後手を引くので指しにくいですが、落ち着いておけば後手陣の乱れの大きさが目立ちます。

ここで△4六馬なら▲5八飛が幸便。△4二玉なら▲2二歩、△同金、▲5四歩でペースは握れそう。

後手陣はバラバラなので、先手は強く戦えば良くなる変化が多いようです。

 

 

早繰り銀は、最近よく見る▲5六角・▲4六銀・▲3七桂・▲2六飛の形の研究もしてみたいですね。

早繰り銀いろいろ 01

最近は▲4六銀(△6四銀)の形に組む将棋をよく見かけますね。今日載せるのは羽生-佐藤にも出てくるような伝統的な(?)早繰り銀ですが…。

 

実戦で指したのでメモしておきます。基本的な内容です。

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一応先手ペースとされている仕掛け。

下図のような受けの形になりませんので。

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最近は桂ポンが流行っている影響で△7四歩が早い場合が多く、知らず知らずのうちにこの早繰り銀の受けの形が作れない駒組みになっている場合が多い気がします。

 

ただし局面は難しく、浮かむ瀬の評価値は+200ほどですが少し進めると互角に戻る変化も多かったです。よく進む局面ですが、あまり考えたことはなかったので少し検討してみます。

そもそも何か本に書いておりそうではありますが…ご教示いただけると幸いです。ただ、最初の図自体が通常の角換わりとは少し違うオープニング(△8五歩まで伸びてないことなど)なので、同一局面はないでしょうが。

 

最初の図から、△5四銀、▲3四歩、△同銀、▲2四歩、△同歩、▲同飛、△2三金、▲2八飛、△2四歩、▲5六歩で下図。△5四銀と上がらずに右玉に組むのもありますね。

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後手としては、金銀を押し出して抑え込めれば良くなりそう。▲5六歩を突いておかないとどこかで△4五歩と突かれてその狙いが実現しそうです。

ここで後手は△4二玉や△3三桂が無難でしょうが、強く△4五歩も考えられるのでそれぞれ検討してみます。

 

まずは△4二玉。

これには▲5五歩や▲3五歩、▲7七銀、▲5五銀など色々読んでいましたが、結果的に上がる場合が多かったので▲7七銀で進めてみます。

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既に▲7七銀と上がっている形の場合は▲5五歩~▲5六角や、いきなり▲5五銀、またはじっと▲7九玉などが有力でしょう。この形の場合は5筋が戦場になりやすい上、△3三桂~△4五桂などで狙われる場合もあるので、玉は6八よりも7九や8八の方が良いです。

 

以下無難に進めば下図のような感じ。

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△6五歩~△6四角と打たれると角のラインに苦しめられそうなので、▲6六歩は早めに突いておくのが良いでしょう。△4五歩ならいつでも▲5五銀。先手は▲5五銀や▲5五歩~▲5六角から動きたいところ。

形勢は+100ぐらい。

 

△4五歩の変化はまた明日。

 

 

閑話休題

最近若島正先生の「盤上のファンタジア」を入手しとき始めたのですが、言語を絶するほど面白いですね。すんなり問題を解けたとしても(すんなり解ける問題などないのですが)、解答編を読めば必ず新しい発見があります。

再版されないんでしょうかね…

相掛かりの序盤 07

前回の続き。引き続き図面は先後逆の表示です。

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7四の飛車をどう使っていくのか?というのをソフトに検討させた手順から考えてみたいと思います。

上図から▲3七銀(▲同銀は後述)、△3三桂、▲9六歩、△9四歩。

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ここから▲7六歩と突くために先手が▲6六歩、△4三銀、▲6七銀と進めると、△1三角から動くのが急所。

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以下▲5二金には△3五歩から手が作れている形。飛車の横利きが通り、息苦しさが解消されます。このように△1三角と先手で出て△3五歩と突ける順は概ね後手が上手く立ち回っていると言えるようです。

 

先手が立体的な駒組みを望むのなら、▲1六歩も入れた上で(△1三角に▲1五歩を用意)▲5八金~▲6七金のような順が良いでしょうか。

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以下▲7六歩~▲7七角~▲8八玉まで入ると指す手のない後手は圧死しそうです。浮かむ瀬の候補手はここで△3五歩と仕掛ける手で、以下▲同歩、△2四飛、▲2六歩、△3四歩、▲同歩、△同飛、▲3六歩、△1三角と一歩損しながら飛角を働かせます。

評価値は-50ぐらいで均衡は取れているようです。後手を持って攻め切るのは大変そうですが。

 

先手としては、6六や7六の歩を突かずに▲5九金~▲4八銀~▲3七桂のように低い陣形を保って駒組みを進める順もありそうです。角は好所で▲7六歩と突くか▲9七角で使うイメージ。

 

さて、最初の△4五歩に▲同銀の変化です。

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以下▲5五角、△1八飛、▲3五歩が狙いの手順。

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△2四飛を許してはまずいので▲2五歩と打ち、△3六歩、▲同銀と進んでどうか。評価値は五分ですが、3筋や4筋の歩が消えて後手の飛車が立ち回りやすくなったような印象を受けます。

 

暫く相掛かりの序盤シリーズを続けてきましたが、この辺りで一回終了ということにしたいと思います。また実戦で遭遇したら更新してみます。

相掛かりの序盤 06

前回の続きです。少し手を進めますが、茫洋とした局面が続きます。

今回も図面は先後逆の表示です。

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とりあえず上図から。実戦でも進みやすい局面ではないかと思います。

▲7六歩と突く間合いを計りながら駒組みすることを考えると、▲6八玉よりも▲6九玉~▲6八銀(~▲7九玉)の駒組みの方が良いのかな、と思ったので今回はそちらの手順で進めてみます。

上図から▲6九玉、△3四歩、▲2四歩、△同歩、▲同飛が一例。

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△3四歩では△1三角という手も示されました。以下△3四歩~△3三桂といった順です。飛車先を切らせず先手の手を限定する作戦で、これもありそう。ただ△1三角、▲6八銀、△3四歩、▲7六歩、△3三桂、▲6六角の進行は後手の本意ではないような気がする。▲6六角と好タイミングで好位置に出られているのが少し気になるところ。

 

上の局面では△3五歩と飛車をぶつける手と、△4四歩から穏やかに指す順があるようです。

まずは△3五歩から。

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飛車交換は後手に利があるので、先手は▲2八飛と引くところ。自然に進めると、▲2八飛、△3六歩、▲2四歩、△4四角、▲2三歩成、△2七歩、▲同飛、△2六歩、▲2八飛、△2三金。

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上の局面も評価値は-50ほどで互角。お互いに主張のある局面だろう。以下▲3五歩なら△2四金として、金の力で飛車を抑えておいてどうか。

これは力将棋といった感じ。

 

△3五歩では△4四歩も考えられる。

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「歩越し銀には歩で対抗」の形を作りながら、△4二銀~△4三銀と立て直す順を見ている。こちらは穏やかな展開を志向する手だ。

以下▲6八銀、△4二銀、▲2八飛、△2三歩、▲7九玉、△4五歩が一例。

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▲同銀なら、△5五角、▲1八飛、△3五歩で△2四飛を狙いにする。▲3七銀なら△4三銀と立て直して一局。ゆっくりした転回になると7四の飛車をどう使うのか全く分からないので、この進行はもう少し進めてみたいと思います。類型の生じやすそうな形ですし。

ちなみに、どちらの展開も評価値は-50~+50の間を動いています。