コンピュータ将棋あれこれ
最近は有難いことに様々なコンピュータ将棋のソフトが無料で公開されていて、本当に便利になりました。
最近は技巧・浮かむ瀬に加えて、やねうら王+elmoやSilent Majority+elmoなども加えて検討に用いています。開発者の方々には大変感謝しております。
あまり聞いたことがない話なので詳しい方にお伺いしてみたいのは、ソフトによる環境への依存度の違いです。
例えば、「低スペックのPCや短時間で読ませる場合は(相対的に)技巧が強いのではないか」「とにかく時間を掛けるのなら(今回覇者の)やねうら王+elmoが最強なのか、それとも短時間でもあまり変わらないのか」といった疑問ですね。
もう少し進れば、「一手X秒の棋譜解析ならこのソフトが良い」「指定局面戦を一手10秒で沢山させたいならあのソフトが良い」という点が気になります。
指定局面戦をソフト同士で十局ほど行って進行を参考にする…というのはよく行っているのですが、二つのエンジンを同時に動かすので必然的に出力が小さくなります。互角だった数手で評価値が-1000近い大差になってしまうという、一手ばったりのような将棋も稀に生じますね。
尤も、様々なソフトの解析結果を見たところでどれが正確なのか人間に判断することは難しいでしょうから、エンジン・評価関数の体系から推測するほかないと考えられますが…
いずれにせよ私から見ればとてつもなく強い存在ですから、気にしなくて良いレベルの違いなのでしょう。笑
あとは思考エンジンと評価関数の噛み合わせの良し悪しがあるのか否か…思考エンジンが何であれとにかく最新の評価関数を入れるのが正しいのか、といったことにも興味があります。下手の横好きですが…。
銀冠穴熊vs四間穴 04
先月末に書いた以下の記事、大会で類型を指したので追加でメモしておきます。やはり頻出の戦型ですね。
銀冠穴熊vs四間穴 03 - Dimensional Sniper
△2二角と引くのが工夫の一手というのは、前回解説したところ。但し、先後が入れ替わっているので△3一金の一手が入っていません。
今回からやねうら王+elmoを導入してみました。一手一手じっくり読ませる場合に特に有用だという話を聞きますね。
上図のやねelmoの評価値は-200ぐらいで後手に振れます。
実戦は、▲5六銀、△4四銀に▲4五銀とぶつけてきました。△同歩、▲同歩と進んで下図。
先に角を逃げているとはいえ、次に▲4六銀打が少し気になるところ。
実戦では▲4六銀に躊躇なく△3三銀と打ちつけ、△3一金~△1四歩~△2五歩で作戦勝ちになり押し切ったのですが、▲6五銀でなく▲6五歩と突く変化(下図)に比べると、居飛車が大分損をしているな、と考えていました。実際、銀を打った局面の評価値は互角に戻っています。
実戦中は△8四飛~△5五歩で受けるのを考えていたのですが、▲6五歩以下が分からず却下。ソフトの評価は-100ほどに落ちるので微妙なようです。
やねelmoの読み筋は悠々と△1四歩。▲4六銀には△5五銀で受かっています。
以下▲同銀、△同歩、▲4六銀なら△8四飛で先の変化に比べて一手得しています。そで▲6五歩なら、△8六歩、▲同飛、△7四飛と強く戦って後手-300ぐらい。
少しひねって最初の▲4六銀のところ▲5六歩なら、△3一金と締めておいて盤石の態勢。
ここで▲4六銀なら、△8六歩、▲同歩、△6七銀と強く戦う。
以下▲6五歩、△7六銀成、▲2二角成、△同金と進む。
後手は△6六角や△8六飛が確実な手。先手は桂香を拾えず、3筋に拠点を作れたとしても打ち込める駒がなかなか入らない。
形勢は-300~-400ほど。
角換わり新型同型 01
半年ほど前、角換わりの新型同型を「千田流△6二金~△8一飛」というタイトルで01~09まで検討していました。
最初の記事は下です。
この記事を書いた当初は「△6二金~△8一飛」の形を先手番が採用すると、千日手模様になり先手番としては面白くない、という結論に向けて検討しているイメージでした。
しかし、今は▲5八金型への△4二玉型での後手の仕掛けが多くの形で利くということで、先手番でも▲4八金と構える将棋が増えてきました。
そこで再度この形を考えてみよう…と思うのですが、手の付けどころが分かりませんので、気になったプロの実戦を紹介していく形式を取ろうと思います。よって思い出したように時々更新するシリーズになりそうですが…
最近衝撃を覚えたのは、村山-畠山鎮(竜王)。
いきなり▲4八金型じゃないやん…と思われそうですが、「▲4五歩の位取りには後手は右玉に組み替えれば打開が難しい」と先述した記事のシリーズで書いていました(千田流△6二金~△8一飛 02 - Dimensional Sniper)。
基本的に後手は△6二金~△5二金を繰り返すだけですから、多少の形の違いは似たようなものです。本譜の先手の金は5八→6八→6九と動いています。
実戦は、以下△6二金、▲7九金寄、△4一飛、▲8八銀、△8一飛、▲7七桂。
打開が難しそうですが、パンツを脱ぎすててしまうのが好手。
ここで△4九角と反撃に出ましたが、▲6五歩、△同桂、▲同桂、△7六角成、▲7七金、△7五馬、▲6八飛が好手順。
手なりに駒を進めて、後手は相当受けにくい形。後手が右玉にして徹底待機を狙う作戦は決定打が出ず細々と指し続けられてきましたが、これは相当有力なのでは?と思います。
※5/13追記
記事を書いた後、丸山-糸谷(竜王)でも似た構想が出て先手が快勝しました。
対▲7七飛戦法 02
前回の続きです。
▲6六歩型の変化。
先手としてはこちらの変化の方が良いようです。評価値は-300~-400ほど(浮かむ瀬)。
以下△3一角、▲9六歩、△7二銀、▲9七角、△8三銀、▲7七桂で下図。
尚、△7二銀では△7二金も有力です。
▲9六歩のところ▲6七銀では、△7二銀、▲9六歩、△6四銀、▲9七角に△8五飛で7五の地点が受かりません(下図)。
この順も、飛車交換・大駒交換は後手に利があるという判断がある故に成立する手です。△7二銀型が飛車の打ち込みに強い形。
よって先手は▲7七桂~▲9六歩~▲9七角を急いで二番目の図になります。これなら△6四銀ならすぐに▲6五歩と追い返せる理屈です。
▲7七桂以下、△8四銀、▲6五歩(次の△6四銀を防ぐ)、△9四歩、▲3八玉と進んで下図。
後手は手を入れる場所も難しいので、△9五歩と仕掛けます。以下▲同歩、△同銀、▲7四歩、△同歩、▲5三角成、△同角、▲9五香、△同香はほとんど一本道か。
角香と銀銀の交換。▲9六歩には△7五歩で飛車の行き場所が難しい。後手からは△2四香が狙いの一つ。
評価値は-450ほどで後手良し。とはいえ少しのミスで一気に互角に戻る変化も多いので、注意深い指し回しが必要なのは確かです。
ざっとまとめると、対▲7七飛戦法のポイントは、飛車先を換えること・△3一角+△6四銀+△8四銀で7五の地点を狙うこと・飛車交換は恐れないこと、の三点でしょうか。
以上、評価値や進行を見るとかなり心強い結果となりました。▲7七飛戦法を許さなければ、4→3系統の将棋にされることはもうありません。やりました。笑
さて、私は記事をまとめて書いて予約投稿している場合がほとんどなので、記事を書いている時と更新されるタイミングにはずれがあります。
実は、記事を書いている今現在は、コンピュータ将棋選手権が行われている最中です。大会後にまた強いソフトが公開されるのかな…と期待しつつ、そして普段無料で使わせて頂いている感謝を込めて観戦しているところです。
現状(5/2時点)で公開されているものの中でも、浮かむ瀬よりSilent Majority1.25の方が強いという話もありますね。私から見ればいずれにせよ神の領域ですから、時間を掛けて読ませる分には大差ないと思っていますが、新しいソフトが公開されればそちらも使ってみたいところです。
対▲7七飛戦法 01
昔ツイッターで対策を見たことがある形ですが、細かい部分を忘れてしまったのでメモしておきます。
▲7七飛戦法の出だしは下図。
普通によくある4→3戦法に合流させるのもありますが、咎めに行きたいところ。
上図以下△8六歩、▲同歩、△同飛、▲7八金、△8二飛、▲8七歩、△4二玉、▲7五歩、△3二玉、▲7六飛、△5四歩と進めて下図。
後手は飛車先の歩を換えてしまうのが工夫。これは▲8六飛の飛車ぶつけへの対策ができていないと指せない手です。
上図でいきなり▲8六飛は、△同飛と応じておいて7五と8六の歩がまとめにくい形(後手は△5三銀~△6四銀のようにして狙う)。浮かむ瀬でも技巧でも最終的には-300以上に振れます。この順が成立しないというのが後手としては非常に大きなポイント。
ただ、現実的にはいい勝負という気もしますが…。先に△7二銀(金)として交換を拒否する形を用意しておくのもあるかもしれません。
上の変化をクリアしたとして、以下後手は▲4八玉、△4二銀、▲6八銀、△5三銀として引き角+△6四銀から7五の歩を狙います。
先手は7五の地点を補強したいところ。▲6六銀型にするか▲6六歩とするかで違う展開になります。
ちなみに、上図で▲7四歩は-600ほど後手に振れます(浮かむ瀬)。以下△同歩、▲同飛、△6四銀、▲7六飛、△3一角から△6二銀~△5三銀上などとどんどん盛り上がって後手良しのようです。
今日は▲6六銀型を作る手順から考えてみます。
上図から▲7七銀に△7二銀が骨子の一手。
△6四銀・△3一角・△8四銀で単純明快に7五の地点へアタックするのが狙い。先手も▲9六歩~▲9七角で一枚足して対応したいところですが…
以下▲6六銀、△6四銀、▲7七桂、△3一角、▲9六歩、△8三銀、▲9七角、△8四銀。
こう進むと角頭の弱点と飛車の狭さが痛い。▲7七桂は△8五銀を防ぐために必要な手です。
▲7四歩には△同歩、▲同飛、△7五歩なので先手は指す手がない。▲3八銀、△9四歩、▲3九玉、△9五歩、▲同歩、△7五歩の進行は-600ほど(浮かむ瀬、技巧)。
▲9六歩~▲9七角ではなく、▲5六歩~▲5七角で7五の地点を補強するのも考えられる手順。
即ち▲9六歩のところで▲5六歩と突く(下図)。
この手には△8三銀、▲7九角に△8八歩が絶妙手。
▲同角なら△8四銀。▲同金にも△8四銀と出て、▲5七角には△7五銀右が一閃。
以下飛車を残せば△8四角が刺さりますし、角を残せば△6八飛が痛い。ソフトらしい鮮やかな手ですね。
早繰り銀いろいろ 02
前回の続きです。△4五歩の変化。
危なっかしい手ですが難しい変化を内包しています。評価値は+300ぐらい。
先手は▲5五銀と出たいところ。以下△同銀、▲同歩に△3五角が気になる手。
△3五角のところは△4二玉も一局。先手も▲7七銀と追随するか、積極的に▲4四銀もあるでしょうか。ただここで△4二玉を選ぶなら、△4五歩のところで△4二玉を選ぶ人の方が多い気がします。
△3五角は馬を作られるので嫌な手ですが、▲6九玉、△5七角成、▲6八金、△4七馬、▲7八玉が落ち着いた手順。
後手を引くので指しにくいですが、落ち着いておけば後手陣の乱れの大きさが目立ちます。
ここで△4六馬なら▲5八飛が幸便。△4二玉なら▲2二歩、△同金、▲5四歩でペースは握れそう。
後手陣はバラバラなので、先手は強く戦えば良くなる変化が多いようです。
早繰り銀は、最近よく見る▲5六角・▲4六銀・▲3七桂・▲2六飛の形の研究もしてみたいですね。
早繰り銀いろいろ 01
最近は▲4六銀(△6四銀)の形に組む将棋をよく見かけますね。今日載せるのは羽生-佐藤にも出てくるような伝統的な(?)早繰り銀ですが…。
実戦で指したのでメモしておきます。基本的な内容です。
一応先手ペースとされている仕掛け。
下図のような受けの形になりませんので。
最近は桂ポンが流行っている影響で△7四歩が早い場合が多く、知らず知らずのうちにこの早繰り銀の受けの形が作れない駒組みになっている場合が多い気がします。
ただし局面は難しく、浮かむ瀬の評価値は+200ほどですが少し進めると互角に戻る変化も多かったです。よく進む局面ですが、あまり考えたことはなかったので少し検討してみます。
そもそも何か本に書いておりそうではありますが…ご教示いただけると幸いです。ただ、最初の図自体が通常の角換わりとは少し違うオープニング(△8五歩まで伸びてないことなど)なので、同一局面はないでしょうが。
最初の図から、△5四銀、▲3四歩、△同銀、▲2四歩、△同歩、▲同飛、△2三金、▲2八飛、△2四歩、▲5六歩で下図。△5四銀と上がらずに右玉に組むのもありますね。
後手としては、金銀を押し出して抑え込めれば良くなりそう。▲5六歩を突いておかないとどこかで△4五歩と突かれてその狙いが実現しそうです。
ここで後手は△4二玉や△3三桂が無難でしょうが、強く△4五歩も考えられるのでそれぞれ検討してみます。
まずは△4二玉。
これには▲5五歩や▲3五歩、▲7七銀、▲5五銀など色々読んでいましたが、結果的に上がる場合が多かったので▲7七銀で進めてみます。
既に▲7七銀と上がっている形の場合は▲5五歩~▲5六角や、いきなり▲5五銀、またはじっと▲7九玉などが有力でしょう。この形の場合は5筋が戦場になりやすい上、△3三桂~△4五桂などで狙われる場合もあるので、玉は6八よりも7九や8八の方が良いです。
以下無難に進めば下図のような感じ。
△6五歩~△6四角と打たれると角のラインに苦しめられそうなので、▲6六歩は早めに突いておくのが良いでしょう。△4五歩ならいつでも▲5五銀。先手は▲5五銀や▲5五歩~▲5六角から動きたいところ。
形勢は+100ぐらい。
△4五歩の変化はまた明日。
閑話休題。
最近若島正先生の「盤上のファンタジア」を入手しとき始めたのですが、言語を絶するほど面白いですね。すんなり問題を解けたとしても(すんなり解ける問題などないのですが)、解答編を読めば必ず新しい発見があります。
再版されないんでしょうかね…