飯塚流と後手超速 01
先手中飛車に△7三桂~△6五歩と仕掛ける形に限界を感じ始めたので、前やっていた別の形を再考してみたいと思います。
それは、後手が角道を開けずに△7三銀~△6四銀と繰り出していく形。最近は「後手超速」などと呼ばれているのをよく見かけますね。
この形の源流は、数年前の勝又講座の先手中飛車対策特集回に載っていた下の形だと思います。飯塚先生が連採して知られるようになったと思われるので、私は勝手に飯塚流と呼んでいます。笑
以下藤井-飯塚(棋聖)は、▲2八玉に△7五歩、▲同歩、△6四銀と仕掛けた。
「▲2八玉では▲6七銀だった」という藤井先生の感想がある。その進行は後ろでご紹介。
本譜は上図から▲6五歩、△7五銀、▲5四歩、△同歩、▲同飛、△6四歩と進んだ。
通常なら▲5四歩で飛角が一気に捌けるところだが、ここでは後手が角道を開けていない効果で、先手の角を負担にすることができる。
以下▲5四飛、△6五歩、▲5五角、△7三歩、▲7四歩、△6三金…で難解な進行ですが、金銀が低すぎて先手の攻めが軽い印象。
▲2八玉で▲6七銀としたのは橋本-飯塚(B1)。
▲6七銀に単に△6四銀だと▲6五歩~▲6八角で▲7七桂を狙われるので、じっと△7二飛と力をためる。
以下▲5四歩、△同歩、▲同飛、△6四銀、▲5九飛、△7五歩と自然な進行。
以下▲同歩、△同銀、▲6八角、△3四歩、▲5四飛、△8六歩。形勢は難しいが、先手玉が不安定なまま戦いになるので居飛車としてもやりがいのある仕掛けだろう。
手順中▲6八角に△3四歩がセットの手順で、角交換を狙われなくなったところで後手は角道を開けるのが良い。
なお、△3四歩が遅い分△1四歩は突いておきたい歩だが、本譜はここから▲1五歩として端と▲3四飛を絡めた攻めを狙う展開になって逆用された。この順には警戒が必要だ。
実戦はどちらも後手勝ちだが、急戦が得意な飯塚先生ならではという指し回しで指しこなすのは大変そう。
さて、上の形で△3二玉、△4二銀、△5二金を後回しにして△6四銀と出てしまえば後手超速と呼ばれている形になります。ただその思想には共通したものがある(角道を開けないことで先手の角を負担にさせる点など)と思うので、まずは飯塚流を紹介してみました。
角換わり▲4五桂 基本の攻め筋 06
前回同様、▲4五桂に△4四銀と上がられた場合の進行例をご紹介。今回は▲2九飛と引く形です。
今季C1の青嶋-高橋戦より。
青嶋先生は角換わりでの左美濃を時おり採用されています。(昨季C2での星野戦など)
下図は▲4五桂と跳ねた局面。
△2二銀なら▲7七角や▲5五銀の筋を絡めて攻めるのだろう。
本譜は△4四銀とし、▲2四歩、△同歩、▲同飛、△2三歩、▲2九飛と進んだ。
△2三歩に▲3四飛とするのは、後手陣がしっかりしている上、先手陣に不備が多い(飛車打ちの隙がある、△8八角の筋があるなど)ため無理そう。実戦は▲2九飛からじっくりした駒組みへ。
少し手順を飛ばして下図。
以下、△8一飛に▲1六角。
▲1六角は△4四銀とかわされた形の一つの狙い筋。本譜は駒組みを進めた後に打つ例だが、飛車を引いた後にすぐ打てる場合もある。
これで3四の歩取り自体は受けにくいが、実は局面は難しい。以下△5一玉、▲3四角、△2四角、▲4七金、△6二玉と後手は右玉に構え直す。
先手は歩得だが筋違い角の活用も簡単でない。
以下進んで下図。
図の通り、一転して渋い展開に進んでいる。▲3九飛は▲2五歩~▲3五歩を見せて後手の動きを急かした手。
以下後手が動いてきたところに上手くカウンターを決めて先手勝ち。
角換わり▲4五桂 基本の攻め筋 05
前回の続きで、▲4五桂に△4四銀とかわされた場合の攻め筋を紹介します。今回も▲3四飛と横歩を取る形。
折角なので私の実戦例から。△8五歩に▲7七銀とせず▲4五桂と跳ね、△4四銀に▲2四歩と突いた局面。この△4四銀では△2二銀もあったでしょうか。
以下△同歩、▲同飛、△2三歩に▲3四飛。ここは△2二歩と受けておいて、△6四銀~△7五歩に期待するのも一局。
本譜は▲3四飛に△2五角と飛車を捕獲された。ここからの攻めが今回のテーマ。
以下▲3二飛成、△同玉、▲2六金、△1四角、▲1六歩が独特の進行。以前まとめたものの中に出てきていた攻め筋を思い出したので決行してみた。
この順は△5二金が入っているなどの形の違いによっては成立しなさそうだが、上図では上手くいっている。評価値は+500~+800。
以下△2四歩、▲1五歩、△2三角、▲3五金が気持ちの良い進軍。
△同銀と取るよりなさそうだが、▲同歩とこの筋の歩が伸びてくるのは大変味が良い。
ちなみに浮かむ瀬によると、△2五角では△2八角が優ったとのこと。以下▲1五角で互角の進行か。
後手早繰り銀 メモ
技巧や浮かむ瀬と戯れながら、考えたことをメモ。
先手が▲4五桂を早く跳ねる順を狙う手に対して、後手が2筋を受けずに早繰り銀に組むのは最近24やウォーズでよく見かける構想。
【最先端の後手番角換わり】
— こいなぎ@24 (@naginyan135) 2017年1月25日
この形の早繰り銀は特に後手番で有力で、最先端の構想となる。
後手番の場合は手数的に2筋を切らせて指すことになるが、この形では先手としても飛車先の歩を切るメリットはあまりないのだ。
なお、本譜の▲5六角から角を切って▲3五銀打は参考になる攻め方だ。 pic.twitter.com/YXkRdAyHLV
上の例では飛車先の歩を切らせていませんが。
通常後手早繰り銀には腰掛け銀で無難に対応できるはずですが、先手の▲3六歩~▲3七桂が早いため、先手が定跡通りに対応するのは難しいということだと思っています。
加えて、△6四銀の位置が5三に利きを足していて▲4五桂の筋に備えているのもプラス材料でしょうか。
出だしは下図か。
以下▲2五歩、△7三銀、▲3七桂、△6四銀。
上図で▲2四歩は、△同歩、▲同飛に△3五歩で王手飛車のラインがあるので先手も怖い。
▲4六歩なら、飛先を切らせることにこだわらず△3三銀と上がってしまえばいいのでは、と思うがどうだろう。
まだ▲4五桂とは跳ねられない。▲6八玉なら△4二玉と上がっておいて、結局▲4五桂とは跳ねにくそう。
以下は後手は銀交換を狙うか、7筋の歩だけを切っておくか、上のツイートのような布陣にするか…だろうか。確かに▲4七銀~▲5六銀~▲6六歩のような手は間に合わなさそう。そう進むのは普通の早繰り銀よりも先手の形が決まっていて後手が得している気がします(形勢云々を言える段階ではありませんが)。
△3三銀は戦いの中でいずれ上がる場合が多いので、△3三角といった攻め筋を狙っているのでなければやっぱり上がりたい…と現時点では思っています。古いのでしょうか。笑
下は△3三角の攻め筋の一例です。
【最先端の後手番角換わり&△6五桂の成立条件】
— こいなぎ@24 (@naginyan135) 2017年2月4日
▲6八玉▲5八金▲4七銀型には基本的には△6五桂が成立しないので、△3三角と打ってから跳ねていくことになる。
▲8八銀に△7五歩が参考になる手順で、先に△7五歩だと、△6五桂に▲6六銀が気になる。 pic.twitter.com/tOoGpMZYTD
尤も、こいなぎさんのツイートには「後手番の場合は手数的に2筋を切らせて指すことになる」と書いてあるので、先手により良い順があるのかもしれませんが。
飛先を換えさせた場合に気になっているのは、▲6八玉を保留されて右玉の含みを残される順。如何せん早繰り銀に形を決めてしまっているので、先手に柔軟に指されるのは気になります。
その場合は7筋を切って△5四角を狙うのでしょうか。…うーん、何とかなる気もしてきました。笑
角換わり▲4五桂 基本の攻め筋 04
今回は、△4四銀と上がってきた場合の攻め筋を考えてみます。
一度書きましたが、基本的には「△4四銀と上がらせれば成功」です。△4四銀に▲2四歩、△同歩、▲同飛、△2三歩(△2二歩という受け方もある)の時、飛車を横に使って暴れられそうなら▲3四飛から一気の攻略、それが難しい場合や先手陣が飛車打ちに弱い場合は▲2九飛から駒組み、でどちらの展開も先手が不満になることは相当少ないからです。
まずは飛車を横に使って暴れる例から、私の知っているプロの実戦例をご紹介。
マニアックですが、行方-北浜戦(B1、2007)より。
ちなみに一手損角換わりに対する▲4五桂は、実は以前から指されていたのではないかと思います。中川-青野(B2、2014)もその例。
さて、上図の形は5三に駒の利きがないので△2二銀とは引けません。以下△4四銀、▲2四歩、△同歩、▲同飛、△2三歩、▲3四飛、△3三桂、▲4四飛、△同歩、▲5三桂成が一直線の進行。
△4四銀では△4二銀もあるのかもしれませんが、同様に進めて△4四歩と桂馬を取れるわけでもないので指しにくいでしょうか。
浮かぶ瀬の評価値は既に+1000オーバー。以下△5二銀、▲同成桂、△同玉、▲5四銀、△8三飛、▲5六角で攻めを繋ぎました。
先手は飛車打ちに強いので、攻めが繋がれば自然と先手が優勢になります。
今回は先手に条件の良い例でした。
異次元の狙撃手 19
久々に青嶋先生の将棋から。竜王戦6組の青嶋-三枚堂戦より。
横歩取りから、後手の三枚堂先生が9筋から手を作りにきた局面。
平凡な応手では後手の仕掛けが上手くいってしまうので、先手としては上手い対応が求められるところ。
以下▲3三角成、△同桂、▲5六角、△2四銀(▲2三角成の防ぎ)に▲8三角成が先手の歩切れを突いた一着。
尤もこれで決まりという訳ではなく、ほぼ互角の進行。
後手も馬は取れないので△4四飛と逃げるが、先手は▲3七桂とじっと駒を使い、△8六歩と歩切れを解消する手に▲2五歩で駒得を図る。
以下△1五銀では▲2九飛と引かれて銀の退路に困るので、一旦は△同桂。そして▲同桂に△4五飛と桂馬を取り返しに来たが、そこで一回▲3三桂成が成り捨ての手筋。
こうして形を乱しておいて、後手に強い戦いをさせにくくしている。
以下△同金、▲5六馬、△2五歩、▲2九飛、△4四飛に▲1六桂で駒得が確定。
手順に馬を引付けられたのも大きく、上図を眺めると先手陣が相当引き締まって見える。逆に後手陣はキズが多く、形勢はまだ難しいだろうが実際勝ちにくい形になっているように思う。
派手な手は出てこないが、非常にプロらしいと感じる手順だ。
以下後手は待望の△8五桂だが、▲2四桂、△同飛、▲8三歩が緩急を付けた指し回し。
後手としては動きを催促されているが、形が悪いので駒を渡すと反動が大きい。
以下、攻めを上手くいなしつつ▲8二歩成~▲7二とが間に合って先手勝ち。青嶋先生の終始落ち着いた指し回しが印象的。
角換わり▲4五桂 基本の攻め筋 03
今回は、受け手が△6二銀~△5二金と手堅く組んできた場合をまとめてみます。以前まとめたものの中に「この形は仕掛けが成立しない」とありましたが、難しい変化もあるようです。
下図を基本図としていますが、実戦だと▲7八金と△6三銀の交換が入っている形が多いかもしれません。その場合も大きな違いはありません(もちろん変化によっては影響しますが)。
尚、△6三銀でなく△7四歩だと後手の条件が悪くなります。(▲5五角のラインが厳しくなるため)
前回までと異なり後手陣の5三の地点が手厚いので、桂馬を3三で交換する形にしないと犬死してしまいます。よってここでは▲3五歩を入れて仕掛けます。
以下△同歩、▲4五桂、△2二銀、▲2四歩、△4四歩は自然な進行。
このタイミングで△4四歩と突けるのは△5二金型のメリットです。(△6一金型なら▲3四角が刺さる)
①以下▲2三歩成、△同銀、▲2四歩、△3四銀、▲2三角は△4三角としっかり受けられて千日手模様。但し、後手番の時もありますし覚えておいて良い攻め筋でしょう。
②▲2四歩で▲1五角と打つのも、場合によっては必殺になりうる手。ただここでは△2四歩、▲2五歩、△4三玉で息切れ気味か。
▲2五歩では▲同角もありそうだが、後手にもう一歩持たれているので普通に△同銀、▲同飛、△2三歩と打たれるのは味が悪いだろう。ただそこで▲4四飛で桂馬が助かりそうなので難しいのかもしれない。
③▲2四歩で▲3三歩と打つのは私も実戦で指されたことがある手で、有力。
以下△同桂、▲同桂成、△同玉にじっと▲4五歩がいやらしい手。
△同歩なら▲5五角がうるさい。
△6三銀型なら、△5四銀、▲4四歩、△2四歩から△6五歩~△6四角を見て後手が手厚いとは思うが、玉が露出しており勝つのは大変そう。図の場合は尚更だ。
①~③ともに後手が手厚そうな変化ですが、攻め筋としては覚えておいていいでしょう。