Dimensional Sniper

将棋 / 研究 / 青嶋未来

▲6六角型銀冠対策への対応(続)

再び実戦より。たまに指されるこの形についても検討してみます。

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居飛車が銀冠への組み換えを見せたところ、振り飛車が右玉模様に変化してくる指し方。

長い持ち時間の将棋で似たような形を指したことがあるのですが、ここから居飛車が淡々と囲うと駒が偏って仕掛けが難しくなる場合が多いように思います。そもそも▲6六角と上がりにくい感じも。

やねうらelmoの評価も、上図では+150ほどありますが深く囲うと+50ほどに戻ることがあります。

 

色々なソフトに掛けてみましたが、上図は△3二金に反応して少し仕掛けを見せた方が良い局面のようです。

一例は▲3六歩、△6三銀、▲3八飛。そこで△4五歩なら一転して▲6六歩と突きます。

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▲6六歩では強く▲3七桂を示されることもありました。この瞬間なら▲8二角の傷があるので後手も角交換に応じにくいということでしょう。

先手は角交換には応じにくいと見て▲6六歩も自然。以下△7三桂、▲3五歩、△同歩、▲同飛、△4四角、▲3六飛の要領。

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以下一例は、△7二金、▲3七桂、△3五歩、▲1六飛、△3四銀、▲4六歩。

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すごく上手くいっているという訳ではないでしょうが、手の雰囲気だけでも伝わるでしょうか。

形勢はほとんど離れていない模様。振り飛車としては組み合う変化は堅さ負けしそうなので、このような変化を試してみるのも良いのかもしれません。

▲6六角型銀冠対策への対応

ソフトと検討していて面白い構想を示された局面を適当に紹介してみます。指すかどうかは別問題ですが…苦笑

 

下図は、▲6六角型の銀冠を志向した手に対し、振り飛車が急襲を匂わせてきた局面。

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おそらく▲9八香と上がっておけば後手からの急襲はないと思うのですが、△3二銀型で▲9八香と上がるのは少し早いという印象を持っています。△4五歩から角交換になった時、穴熊に組んで必ず打開できるのかどうかが若干不安。尤もこれで何の問題もないのかもしれません。

▲8八玉は△6五歩~△8五歩がいつでもあるので嫌か。▲5八金~▲6八金は、同じく△6五歩~△8五歩と仕掛けられた後に▲6八角と引けなくなるので不安。

まあ、血気盛んな後手陣を見るに、囲いにいく手は何でも襲いにくるのでしょう。笑

 

やねうらelmoの第一候補手は▲7七桂。(▲5八金と揺れていましたが)

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一見指しにくい手ですが、少なくとも急襲は封じています。更に、数手進めると構想が分かります。
以下△4三銀、▲6八銀、△7二金、▲5九金、△7一玉、▲8九玉。

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後手の指し手は淡々と進めています。

上図以下△8二玉、▲6九金、△6三金左、▲7九金寄、△5四歩、▲3六歩。

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一時期流行ったミレニアムに少し似ている陣形になりました。以下▲5七角まで引いた局面は作戦勝ちと言って良いでしょう。

 

どのぐらい優秀なのかは分かりませんが、相手の気合を外す効果(?)はあると思います。

角換わり新型同型 04

小林裕-藤井聡(王将)より。

いやはや、藤井聡太先生の活躍には目を見張るものがありますね。小林裕先生、平藤先生といった中堅どころの強豪を角換わりで圧倒した将棋は圧巻でした。

 

新型同型から、▲5六銀に後手が足並みを揃えずに△6五歩と位を取った局面。

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実戦は以下、▲4五桂、△4四銀、▲2四歩、△同歩、▲同飛と進みました。

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以下実戦では△2三歩、▲2九飛、△6四角、▲3七金、△5四銀…と進みましたが、ソフトとの検討に依れば、実は上図で△1三角と打つ手があったようです。

△1三角と打つ手はこれまでにも紹介したことがありますが、この場合は特に条件が良いようで、やねうらelmoでは-450ほどに振れました。

△1三角、▲2九飛、△4六角と進んで下図。

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△6五歩と伸ばしておいた効果で、△6四角と引けるのが大きいです。△6四角の形になれば、一歩手持ちにしているので△8六歩の仕掛けがあります。これは後手ペースの戦い。

 

▲4五桂~▲2四歩が成立しにくいとなれば代わる手が必要になります。▲7九玉~▲6九飛と先日の木村-広瀬の順のように進める順もありそう。先手がどう打開するかという将棋になりそう。

 

また、一見指しにくいですがすぐに▲6六歩もあるようです。浮かむ瀬もやねうらelmoもこの手を示してきますね。

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以下△同歩、▲同銀、△5四銀。

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△5四銀で△8六歩は▲同歩、△同飛の瞬に▲6四歩や▲5五銀があって少し怖い。

△5四銀に▲4五銀なら△6三銀で千日手模様。▲7五歩なら△8六歩、▲同歩、△同飛、▲7七銀、△8四飛など。

先手は将来的に▲6九飛の筋もあるか。ソフトは千日手順を示すことも多い局面です。

角換わり新型同型 03

後手が△4二玉~△5二玉の手待ちをした場合に最近気になっているのは、「▲4五歩~▲4六角と打たれた時にどうするのか」です。

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通常対▲4六角型といえば、下の二例のように雀指しに構えるのがよくある局面です。最近の本だと中川慧梧さんの「最強アマの即戦力戦法」などに詳しい記載があります。

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ただ後手が手待ちをしている関係上、この形には組みにくい気がします。上の二つの図の後手陣に組むためには無駄なく指す必要があります。一つ目の図なら▲2五桂~▲2二角で次に▲5五銀、二つ目の図なら次に▲3五歩と、すぐの仕掛けがある形です。

一応、最初の図で△6三銀でなく△5四銀のタイミングで角を打たれるように調整すれば、△6三金で受けて雀刺しにすることもできるのでしょうか。これはまた考えてみます。

 

右玉に構え直して打開を問うのも有力な順ですが、数日前に書いた村山-畠山戦の順はかなり先手が押しているように思います。

島先生の「角換わり腰掛け銀研究」には△5四歩から玉を左に囲って徹底待機する順も載せてあったと思うので、それを読み直してみるのも良いでしょうか。

 

ここまで書いて思い出しましたが、Abemaの藤井-増田も類型ですか。

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増田先生は△5四銀を保留しつつ、▲4五歩と▲2五歩を見て△3一玉~△5二金と構え直しています。

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以下先手は▲1八香~▲1九飛、後手は△8三飛~△7五歩(△6五歩)の仕掛けを狙う展開になります。

 

下手に手待ちせず、上図のように組み替えた方が良いのかもしれません。

角換わり新型同型 02

上村-中村太(王将)より。

下図は、▲4八金~▲2九飛の先後同型から▲6六歩と突いた局面と同一局面です。

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前記事を書いた時には、ここで△6五歩と仕掛ける手を検討しました。下のブログ記事が大変詳しく勉強になります。

角換わり腰掛け銀▲4八金・2九飛△6二金・8一飛型⑤ : 将棋はソフト指しでおk

 

本譜は△6三銀。▲6六歩を積極的に咎めるというより、あくまで千日手気味に待機しようとする作戦だ。

以下後手が△5二玉~△4二玉を繰り返す間に、先手が銀矢倉を完成させ、後手が△5四銀と出て下図。

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堅く囲えたようにも、後手の攻めが当たる位置に玉が移動したようにも見える局面。先日の木村-広瀬でも似たような手待ちがありました。

尚、この図は先月指された糸谷-羽生(竜王)と同一局面です。そちらは図から▲5六歩でもう少し駒組みが続き、後手から仕掛ける将棋になりました。

 

本譜はここで▲1五歩、△同歩、▲3五歩の仕掛け。

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評価値は-50~-100でほぼ互角(やねうらelmo)。銀が参加しておらず軽いようですが、▲7五歩で戦線拡大できるので先手の仕掛けも手になっているようです。

実戦はここで△6五歩と中村太先生らしく攻め合いに出て、▲4五桂、△4四銀、▲3四歩、△9五歩…と進みました。難解なねじり合いになりましたが後手勝ち。ソフトに掛けてみたところ▲4五桂では▲7五歩という手もあるらしく、これも難解というほかないですね。

 

ここはもちろん△同歩や△4四歩で受けに回るのもあるところ。ソフトの第一候補は△4四歩で、以下▲7五歩、△同歩、▲3四歩、△同銀、▲2四歩、△同歩、▲同飛、△2三金、▲2九飛が進行の一例。

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ここで△2四歩か△2八歩か。確かに後手陣が薄い感じがするので、太地先生は攻め合いを志向したのかもしれません。

コンピュータ将棋あれこれ

最近は有難いことに様々なコンピュータ将棋のソフトが無料で公開されていて、本当に便利になりました。

最近は技巧・浮かむ瀬に加えて、やねうら王+elmoやSilent Majority+elmoなども加えて検討に用いています。開発者の方々には大変感謝しております。

 

あまり聞いたことがない話なので詳しい方にお伺いしてみたいのは、ソフトによる環境への依存度の違いです。

例えば、「低スペックのPCや短時間で読ませる場合は(相対的に)技巧が強いのではないか」「とにかく時間を掛けるのなら(今回覇者の)やねうら王+elmoが最強なのか、それとも短時間でもあまり変わらないのか」といった疑問ですね。

もう少し進れば、「一手X秒の棋譜解析ならこのソフトが良い」「指定局面戦を一手10秒で沢山させたいならあのソフトが良い」という点が気になります。

 

指定局面戦をソフト同士で十局ほど行って進行を参考にする…というのはよく行っているのですが、二つのエンジンを同時に動かすので必然的に出力が小さくなります。互角だった数手で評価値が-1000近い大差になってしまうという、一手ばったりのような将棋も稀に生じますね。

 

尤も、様々なソフトの解析結果を見たところでどれが正確なのか人間に判断することは難しいでしょうから、エンジン・評価関数の体系から推測するほかないと考えられますが…

いずれにせよ私から見ればとてつもなく強い存在ですから、気にしなくて良いレベルの違いなのでしょう。笑

 

あとは思考エンジンと評価関数の噛み合わせの良し悪しがあるのか否か…思考エンジンが何であれとにかく最新の評価関数を入れるのが正しいのか、といったことにも興味があります。下手の横好きですが…。

銀冠穴熊vs四間穴 04

先月末に書いた以下の記事、大会で類型を指したので追加でメモしておきます。やはり頻出の戦型ですね。

銀冠穴熊vs四間穴 03 - Dimensional Sniper

 

△2二角と引くのが工夫の一手というのは、前回解説したところ。但し、先後が入れ替わっているので△3一金の一手が入っていません。

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今回からやねうら王+elmoを導入してみました。一手一手じっくり読ませる場合に特に有用だという話を聞きますね。

上図のやねelmoの評価値は-200ぐらいで後手に振れます。

 

実戦は、▲5六銀、△4四銀に▲4五銀とぶつけてきました。△同歩、▲同歩と進んで下図。

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先に角を逃げているとはいえ、次に▲4六銀打が少し気になるところ。

実戦では▲4六銀に躊躇なく△3三銀と打ちつけ、△3一金~△1四歩~△2五歩で作戦勝ちになり押し切ったのですが、▲6五銀でなく▲6五歩と突く変化(下図)に比べると、居飛車が大分損をしているな、と考えていました。実際、銀を打った局面の評価値は互角に戻っています。

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実戦中は△8四飛~△5五歩で受けるのを考えていたのですが、▲6五歩以下が分からず却下。ソフトの評価は-100ほどに落ちるので微妙なようです。

 

やねelmoの読み筋は悠々と△1四歩。▲4六銀には△5五銀で受かっています。

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以下▲同銀、△同歩、▲4六銀なら△8四飛で先の変化に比べて一手得しています。そで▲6五歩なら、△8六歩、▲同飛、△7四飛と強く戦って後手-300ぐらい。

 

少しひねって最初の▲4六銀のところ▲5六歩なら、△3一金と締めておいて盤石の態勢。

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ここで▲4六銀なら、△8六歩、▲同歩、△6七銀と強く戦う。

以下▲6五歩、△7六銀成、▲2二角成、△同金と進む。

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後手は△6六角や△8六飛が確実な手。先手は桂香を拾えず、3筋に拠点を作れたとしても打ち込める駒がなかなか入らない。

形勢は-300~-400ほど。