Dimensional Sniper

将棋 / 研究 / 青嶋未来

角換わり新型同型 03

後手が△4二玉~△5二玉の手待ちをした場合に最近気になっているのは、「▲4五歩~▲4六角と打たれた時にどうするのか」です。

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通常対▲4六角型といえば、下の二例のように雀指しに構えるのがよくある局面です。最近の本だと中川慧梧さんの「最強アマの即戦力戦法」などに詳しい記載があります。

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ただ後手が手待ちをしている関係上、この形には組みにくい気がします。上の二つの図の後手陣に組むためには無駄なく指す必要があります。一つ目の図なら▲2五桂~▲2二角で次に▲5五銀、二つ目の図なら次に▲3五歩と、すぐの仕掛けがある形です。

一応、最初の図で△6三銀でなく△5四銀のタイミングで角を打たれるように調整すれば、△6三金で受けて雀刺しにすることもできるのでしょうか。これはまた考えてみます。

 

右玉に構え直して打開を問うのも有力な順ですが、数日前に書いた村山-畠山戦の順はかなり先手が押しているように思います。

島先生の「角換わり腰掛け銀研究」には△5四歩から玉を左に囲って徹底待機する順も載せてあったと思うので、それを読み直してみるのも良いでしょうか。

 

ここまで書いて思い出しましたが、Abemaの藤井-増田も類型ですか。

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増田先生は△5四銀を保留しつつ、▲4五歩と▲2五歩を見て△3一玉~△5二金と構え直しています。

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以下先手は▲1八香~▲1九飛、後手は△8三飛~△7五歩(△6五歩)の仕掛けを狙う展開になります。

 

下手に手待ちせず、上図のように組み替えた方が良いのかもしれません。

角換わり新型同型 02

上村-中村太(王将)より。

下図は、▲4八金~▲2九飛の先後同型から▲6六歩と突いた局面と同一局面です。

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前記事を書いた時には、ここで△6五歩と仕掛ける手を検討しました。下のブログ記事が大変詳しく勉強になります。

角換わり腰掛け銀▲4八金・2九飛△6二金・8一飛型⑤ : 将棋はソフト指しでおk

 

本譜は△6三銀。▲6六歩を積極的に咎めるというより、あくまで千日手気味に待機しようとする作戦だ。

以下後手が△5二玉~△4二玉を繰り返す間に、先手が銀矢倉を完成させ、後手が△5四銀と出て下図。

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堅く囲えたようにも、後手の攻めが当たる位置に玉が移動したようにも見える局面。先日の木村-広瀬でも似たような手待ちがありました。

尚、この図は先月指された糸谷-羽生(竜王)と同一局面です。そちらは図から▲5六歩でもう少し駒組みが続き、後手から仕掛ける将棋になりました。

 

本譜はここで▲1五歩、△同歩、▲3五歩の仕掛け。

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評価値は-50~-100でほぼ互角(やねうらelmo)。銀が参加しておらず軽いようですが、▲7五歩で戦線拡大できるので先手の仕掛けも手になっているようです。

実戦はここで△6五歩と中村太先生らしく攻め合いに出て、▲4五桂、△4四銀、▲3四歩、△9五歩…と進みました。難解なねじり合いになりましたが後手勝ち。ソフトに掛けてみたところ▲4五桂では▲7五歩という手もあるらしく、これも難解というほかないですね。

 

ここはもちろん△同歩や△4四歩で受けに回るのもあるところ。ソフトの第一候補は△4四歩で、以下▲7五歩、△同歩、▲3四歩、△同銀、▲2四歩、△同歩、▲同飛、△2三金、▲2九飛が進行の一例。

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ここで△2四歩か△2八歩か。確かに後手陣が薄い感じがするので、太地先生は攻め合いを志向したのかもしれません。

コンピュータ将棋あれこれ

最近は有難いことに様々なコンピュータ将棋のソフトが無料で公開されていて、本当に便利になりました。

最近は技巧・浮かむ瀬に加えて、やねうら王+elmoやSilent Majority+elmoなども加えて検討に用いています。開発者の方々には大変感謝しております。

 

あまり聞いたことがない話なので詳しい方にお伺いしてみたいのは、ソフトによる環境への依存度の違いです。

例えば、「低スペックのPCや短時間で読ませる場合は(相対的に)技巧が強いのではないか」「とにかく時間を掛けるのなら(今回覇者の)やねうら王+elmoが最強なのか、それとも短時間でもあまり変わらないのか」といった疑問ですね。

もう少し進れば、「一手X秒の棋譜解析ならこのソフトが良い」「指定局面戦を一手10秒で沢山させたいならあのソフトが良い」という点が気になります。

 

指定局面戦をソフト同士で十局ほど行って進行を参考にする…というのはよく行っているのですが、二つのエンジンを同時に動かすので必然的に出力が小さくなります。互角だった数手で評価値が-1000近い大差になってしまうという、一手ばったりのような将棋も稀に生じますね。

 

尤も、様々なソフトの解析結果を見たところでどれが正確なのか人間に判断することは難しいでしょうから、エンジン・評価関数の体系から推測するほかないと考えられますが…

いずれにせよ私から見ればとてつもなく強い存在ですから、気にしなくて良いレベルの違いなのでしょう。笑

 

あとは思考エンジンと評価関数の噛み合わせの良し悪しがあるのか否か…思考エンジンが何であれとにかく最新の評価関数を入れるのが正しいのか、といったことにも興味があります。下手の横好きですが…。

銀冠穴熊vs四間穴 04

先月末に書いた以下の記事、大会で類型を指したので追加でメモしておきます。やはり頻出の戦型ですね。

銀冠穴熊vs四間穴 03 - Dimensional Sniper

 

△2二角と引くのが工夫の一手というのは、前回解説したところ。但し、先後が入れ替わっているので△3一金の一手が入っていません。

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今回からやねうら王+elmoを導入してみました。一手一手じっくり読ませる場合に特に有用だという話を聞きますね。

上図のやねelmoの評価値は-200ぐらいで後手に振れます。

 

実戦は、▲5六銀、△4四銀に▲4五銀とぶつけてきました。△同歩、▲同歩と進んで下図。

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先に角を逃げているとはいえ、次に▲4六銀打が少し気になるところ。

実戦では▲4六銀に躊躇なく△3三銀と打ちつけ、△3一金~△1四歩~△2五歩で作戦勝ちになり押し切ったのですが、▲6五銀でなく▲6五歩と突く変化(下図)に比べると、居飛車が大分損をしているな、と考えていました。実際、銀を打った局面の評価値は互角に戻っています。

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実戦中は△8四飛~△5五歩で受けるのを考えていたのですが、▲6五歩以下が分からず却下。ソフトの評価は-100ほどに落ちるので微妙なようです。

 

やねelmoの読み筋は悠々と△1四歩。▲4六銀には△5五銀で受かっています。

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以下▲同銀、△同歩、▲4六銀なら△8四飛で先の変化に比べて一手得しています。そで▲6五歩なら、△8六歩、▲同飛、△7四飛と強く戦って後手-300ぐらい。

 

少しひねって最初の▲4六銀のところ▲5六歩なら、△3一金と締めておいて盤石の態勢。

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ここで▲4六銀なら、△8六歩、▲同歩、△6七銀と強く戦う。

以下▲6五歩、△7六銀成、▲2二角成、△同金と進む。

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後手は△6六角や△8六飛が確実な手。先手は桂香を拾えず、3筋に拠点を作れたとしても打ち込める駒がなかなか入らない。

形勢は-300~-400ほど。

角換わり新型同型 01

半年ほど前、角換わりの新型同型を「千田流△6二金~△8一飛」というタイトルで01~09まで検討していました。

最初の記事は下です。

honey1728.hateblo.jp

この記事を書いた当初は「△6二金~△8一飛」の形を先手番が採用すると、千日手模様になり先手番としては面白くない、という結論に向けて検討しているイメージでした。

しかし、今は▲5八金型への△4二玉型での後手の仕掛けが多くの形で利くということで、先手番でも▲4八金と構える将棋が増えてきました。

そこで再度この形を考えてみよう…と思うのですが、手の付けどころが分かりませんので、気になったプロの実戦を紹介していく形式を取ろうと思います。よって思い出したように時々更新するシリーズになりそうですが…

 

最近衝撃を覚えたのは、村山-畠山鎮(竜王)。

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いきなり▲4八金型じゃないやん…と思われそうですが、「▲4五歩の位取りには後手は右玉に組み替えれば打開が難しい」と先述した記事のシリーズで書いていました(千田流△6二金~△8一飛 02 - Dimensional Sniper)。

基本的に後手は△6二金~△5二金を繰り返すだけですから、多少の形の違いは似たようなものです。本譜の先手の金は5八→6八→6九と動いています。

 

実戦は、以下△6二金、▲7九金寄、△4一飛、▲8八銀、△8一飛、▲7七桂。

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打開が難しそうですが、パンツを脱ぎすててしまうのが好手。

ここで△4九角と反撃に出ましたが、▲6五歩、△同桂、▲同桂、△7六角成、▲7七金、△7五馬、▲6八飛が好手順。

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手なりに駒を進めて、後手は相当受けにくい形。後手が右玉にして徹底待機を狙う作戦は決定打が出ず細々と指し続けられてきましたが、これは相当有力なのでは?と思います。

 

※5/13追記

記事を書いた後、丸山-糸谷(竜王)でも似た構想が出て先手が快勝しました。

対▲7七飛戦法 02

前回の続きです。

▲6六歩型の変化。

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先手としてはこちらの変化の方が良いようです。評価値は-300~-400ほど(浮かむ瀬)。

以下△3一角、▲9六歩、△7二銀、▲9七角、△8三銀、▲7七桂で下図。

尚、△7二銀では△7二金も有力です。

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▲9六歩のところ▲6七銀では、△7二銀、▲9六歩、△6四銀、▲9七角に△8五飛で7五の地点が受かりません(下図)。

この順も、飛車交換・大駒交換は後手に利があるという判断がある故に成立する手です。△7二銀型が飛車の打ち込みに強い形。

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よって先手は▲7七桂~▲9六歩~▲9七角を急いで二番目の図になります。これなら△6四銀ならすぐに▲6五歩と追い返せる理屈です。

▲7七桂以下、△8四銀、▲6五歩(次の△6四銀を防ぐ)、△9四歩、▲3八玉と進んで下図。

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後手は手を入れる場所も難しいので、△9五歩と仕掛けます。以下▲同歩、△同銀、▲7四歩、△同歩、▲5三角成、△同角、▲9五香、△同香はほとんど一本道か。

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角香と銀銀の交換。▲9六歩には△7五歩で飛車の行き場所が難しい。後手からは△2四香が狙いの一つ。

評価値は-450ほどで後手良し。とはいえ少しのミスで一気に互角に戻る変化も多いので、注意深い指し回しが必要なのは確かです。

 

ざっとまとめると、対▲7七飛戦法のポイントは、飛車先を換えること・△3一角+△6四銀+△8四銀で7五の地点を狙うこと・飛車交換は恐れないこと、の三点でしょうか。

 

以上、評価値や進行を見るとかなり心強い結果となりました。▲7七飛戦法を許さなければ、4→3系統の将棋にされることはもうありません。やりました。笑

 

 

 

さて、私は記事をまとめて書いて予約投稿している場合がほとんどなので、記事を書いている時と更新されるタイミングにはずれがあります。

実は、記事を書いている今現在は、コンピュータ将棋選手権が行われている最中です。大会後にまた強いソフトが公開されるのかな…と期待しつつ、そして普段無料で使わせて頂いている感謝を込めて観戦しているところです。

現状(5/2時点)で公開されているものの中でも、浮かむ瀬よりSilent Majority1.25の方が強いという話もありますね。私から見ればいずれにせよ神の領域ですから、時間を掛けて読ませる分には大差ないと思っていますが、新しいソフトが公開されればそちらも使ってみたいところです。

対▲7七飛戦法 01

ツイッターで対策を見たことがある形ですが、細かい部分を忘れてしまったのでメモしておきます。

 

▲7七飛戦法の出だしは下図。

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普通によくある4→3戦法に合流させるのもありますが、咎めに行きたいところ。

上図以下△8六歩、▲同歩、△同飛、▲7八金、△8二飛、▲8七歩、△4二玉、▲7五歩、△3二玉、▲7六飛、△5四歩と進めて下図。

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後手は飛車先の歩を換えてしまうのが工夫。これは▲8六飛の飛車ぶつけへの対策ができていないと指せない手です。

上図でいきなり▲8六飛は、△同飛と応じておいて7五と8六の歩がまとめにくい形(後手は△5三銀~△6四銀のようにして狙う)。浮かむ瀬でも技巧でも最終的には-300以上に振れます。この順が成立しないというのが後手としては非常に大きなポイント。

ただ、現実的にはいい勝負という気もしますが…。先に△7二銀(金)として交換を拒否する形を用意しておくのもあるかもしれません。

 

上の変化をクリアしたとして、以下後手は▲4八玉、△4二銀、▲6八銀、△5三銀として引き角+△6四銀から7五の歩を狙います。

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先手は7五の地点を補強したいところ。▲6六銀型にするか▲6六歩とするかで違う展開になります。

ちなみに、上図で▲7四歩は-600ほど後手に振れます(浮かむ瀬)。以下△同歩、▲同飛、△6四銀、▲7六飛、△3一角から△6二銀~△5三銀上などとどんどん盛り上がって後手良しのようです。

 

今日は▲6六銀型を作る手順から考えてみます。

上図から▲7七銀に△7二銀が骨子の一手。

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△6四銀・△3一角・△8四銀で単純明快に7五の地点へアタックするのが狙い。先手も▲9六歩~▲9七角で一枚足して対応したいところですが…

以下▲6六銀、△6四銀、▲7七桂、△3一角、▲9六歩、△8三銀、▲9七角、△8四銀。

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こう進むと角頭の弱点と飛車の狭さが痛い。▲7七桂は△8五銀を防ぐために必要な手です。

▲7四歩には△同歩、▲同飛、△7五歩なので先手は指す手がない。▲3八銀、△9四歩、▲3九玉、△9五歩、▲同歩、△7五歩の進行は-600ほど(浮かむ瀬、技巧)。

 

▲9六歩~▲9七角ではなく、▲5六歩~▲5七角で7五の地点を補強するのも考えられる手順。

即ち▲9六歩のところで▲5六歩と突く(下図)。

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この手には△8三銀、▲7九角に△8八歩が絶妙手。

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▲同角なら△8四銀。▲同金にも△8四銀と出て、▲5七角には△7五銀右が一閃。

以下飛車を残せば△8四角が刺さりますし、角を残せば△6八飛が痛い。ソフトらしい鮮やかな手ですね。