Dimensional Sniper

将棋 / 研究 / 青嶋未来

対先手中飛車左美濃 03

前回の続きです。

今さらですが、居飛車側が更に先手の形を限定したいのなら、早めに玉側の端歩を突いておく方がいいのかもしれません。後手側が穴熊に組むことは相当なさそうですから。

 

さて、△6四銀と出たところ。

f:id:honey1728:20170408192006p:plain

ここで先手が▲6五歩と突かなかった場合どうなるのか、というのも重要。

先手には▲7八金、▲4六歩、▲5九飛など色々な手段がありますが、▲6五歩と突いてこないのなら大体△7三桂と跳ねてしまうのが基本。

f:id:honey1728:20170408214737p:plain

▲6五歩を防いでおいてここから持久戦にするのが狙い。先手は▲5五歩と突くこともできないので、手がかなり制限されています。

以下淡々と駒組みを下図のような感じでしょうか。

f:id:honey1728:20170408230918p:plain

やはり先手からは仕掛けにくい局面。一方後手は銀冠穴熊への組み替えもありますし、△8四飛~△7五歩の仕掛けも狙えます。

尤も、上の順は先手がかなり漫然と組んだ例なので、もっと良い手順はあると思います。

 

対先手中飛車左美濃 02

前回の続きです。

最近は新年度で忙しいので、内容薄めでゆっくり進めていきたいと思います。笑

 

下図は△6四銀と出たところ。

f:id:honey1728:20170408193527p:plain

図の一手前に▲7八金と先受けしたらどうなるのか?というのは気になります。

f:id:honey1728:20170408193508p:plain

以下△6四銀なら、▲6五歩、△7七角成、▲同桂、△7三銀に▲5五歩とすぐに突けます。

f:id:honey1728:20170408193509p:plain

多少駒の配置が違っていたとしても、上図は居飛車が避けるべき局面です。△4四歩には▲5四歩で▲7一角の筋がありますし、△6二銀にも▲5四歩で後手かなりまとめにくいです。これは先手のバランスの良い陣形が活きる形。

上図のように、5筋の歩交換に対して△4四歩~△4三金で受けられない形は避けるべきです。(角を換えていない形なら▲5五歩に△4四歩が間に合うのですが)

 

よって、▲7八金には△6四銀と出ずに△4四歩がおすすめ。角を換えない持久戦にしてしまえば、▲7八金が形を決めすぎていて損になります。

f:id:honey1728:20170408194949p:plain

もちろん、これまで同様に一局と言う他ない局面ではありますが。

対先手中飛車左美濃 01

前回まで「後手超速」というタイトルのもと、先手中飛車に対する後手番の急戦策を取り上げてきました。

今後暫くは、以前紹介した千田-今泉戦をベースに、先手中飛車左美濃で対応する順を考えていきたいと思います。この戦型はすぐに△6四銀とは限らないので、「後手超速」という呼称は外しておきました。(どうでもいいことですが)

 

まずは基本的な手順のおさらいです。何度か載せている手順ですが…。

f:id:honey1728:20170408192003p:plain

細かい所ですが、以下▲3八玉なら△5二金右と先に中央を手厚くしておくのが良いようです。▲5五歩に先に対応している意味があります。

f:id:honey1728:20170408192005p:plain

以下▲2八玉、△3二銀、▲3八銀、△3一玉、▲6六歩、△3四歩、▲6七銀の進行なら△6四銀が骨子となる一手。

f:id:honey1728:20170408192006p:plain

▲6五歩が自然ですが、△7七角成、▲同桂、△7三銀、▲7八金、△4四歩で無事堅陣に組めます。

f:id:honey1728:20170408192007p:plain

尤もこう進んだところで一局という他ないのですが、先手から争点が作りにくいわりに後手玉の方が堅いため、手待ちをすればいい後手番としてはまずまずの立ち上がりだと考えます。

 

この手順を基本線として、次回以降はその分岐を考えてみることにします。

飯塚流と後手超速 05

久々の更新ですが、引き続き後手超速の将棋を紹介したいと思います。尤も、中飛車側が▲5五歩と突いていない場合、超速というよりは普通の急戦という感じが強くなりそうですが…

 

王座戦の鈴木-深浦戦より。

f:id:honey1728:20170323183222p:plain

図は△7三銀と上がったところ。ここから5筋の位は取らないまま、普通の振り飛車のように進めるのが先手の工夫です。

以下▲6六歩、△3二玉、▲6七銀、△4二銀、▲3八玉、△7二飛、▲2八玉、△6四銀で下図。

f:id:honey1728:20170323183223p:plain

上図に至る手順で、△3二銀~△3一銀と組むのが前回紹介した千田-今泉戦の進行です。

本譜は居飛車側が普通の急戦を志向した順で、部分的に良くある手順です。

上図以下▲7八飛、△7五歩、▲8八角、△7六歩、▲同銀、△3四歩。

f:id:honey1728:20170323183227p:plain

そして▲3八銀、△5四歩、▲1六歩に、△7七歩、▲同飛、△6六角と仕掛けました。

f:id:honey1728:20170323183729p:plain

しかし、▲6七銀、△7七角成、▲同角、△3三桂に▲1五歩、△3一金、▲6八角、△2二金、▲4六角が絶品の指し回し。

f:id:honey1728:20170323183228p:plain

鈴木先生なら大楽勝と思いながら指していたかもしれません。実戦も先手が快勝。

 

前にも書きましたが、先手が▲5五歩を突いていない場合は、急戦を敢行しても上手く対応されやすい印象があります。本局はまさにその例です。

飯塚流と後手超速 04

前回の続き。今回は、中飛車側が▲5五歩を保留する例。

▲5五歩を保留されると、中飛車側の駒組みの柔軟性が高まるため、居飛車としてはどこかで角道を開ける展開が多くなります。この場合角を捌かれやすくなるためこれまでのような急戦では上手くいかない場合が多いです。

 

まずは全然違う形ですが、中飛車側の成功例をご紹介。

先後逆ですが深浦-久保(王将)より。

f:id:honey1728:20170217042547p:plain

以下△8二銀、▲7四歩、△同銀、▲7八飛、△4五歩。

f:id:honey1728:20170217042526p:plain

この手が振り飛車らしい手で、居飛車が抑え込む将棋ではなくなりました。

以下▲3四飛、△4六歩、▲4四銀、△4七歩成。

f:id:honey1728:20170217042528p:plain

以下▲4三歩、△3二金、▲3三銀成…で大変な将棋だが、居飛車としては本意の展開ではないはず。実戦は中飛車勝ち。

良い例かは分かりませんが、何かと捌かれやすいという雰囲気だけ伝われば幸いです。笑

 

これでは居飛車が困るので、今泉-千田(王座)をご紹介。

f:id:honey1728:20170217042558p:plain

以下△3四歩、▲2八玉、△3二銀、▲3八銀、△3一玉。

f:id:honey1728:20170217042559p:plain

いかにも千田調といった駒組み。

以下▲6七銀に単に△6四銀と出る。当然▲6五歩と反発されますが、△7七角成、▲同桂、△7三銀とあっさり撤退。

f:id:honey1728:20170217042600p:plain

△7五歩の仕掛けを狙うのではなく、角交換に応じて△7三銀と戻るのが柔軟な手。一見△7三銀が取り残されそうで居飛車失敗に見えますが、駒組みが進むとそうではないことが分かります。

以下飛ばして下図に。

f:id:honey1728:20170217042602p:plain

居飛車は堅さが主張。お互いに動きにくい将棋になっており、千日手歓迎の後手としては十分だと思います。尚浮かむ瀬の評価値はほとんど互角。

実戦は以下▲1八香から端に手を求めましたが、上手く受け流して後手勝ち。

 

△7五歩から銀を繰り出す攻めは、この形だと角を捌かれて失敗しやすいイメージがあります。下の例のようにじっくり組む例も覚えておいて損はないでしょう。

飯塚流と後手超速 03

前回の続き。今回は、後手超速に先手が▲6六銀で対抗する形です。

進行は菅井-大橋戦(第46期新人王戦第一局)より。

f:id:honey1728:20170217034430p:plain

見ての通り、通常の超速における銀対抗を先後逆にしたのと同じ形です。

ただ、以下中飛車側が普通に組む展開なら、先手番の戦法を後手番で指せているので居飛車としては悪い気はしないと思います(先手の一手の得が活きそうな形もあります、後述)。

本譜は少し飛ばして下図。

f:id:honey1728:20170217034431p:plain

ここから△4四歩、▲5三歩成、△同銀上に▲1八香。

f:id:honey1728:20170217035403p:plain

一手早いのを活かし、一歩持って穴熊に組むのが菅井先生の構想だったようです。

以下後手としては先手に満足な形に組まれるわけにはいかないので、金銀を盛り上げて抑え込みに出ます。

ここからの居飛車の指し回しは絶品でした。手順は省略しますので、上のリンクからご覧ください。

 

さて、上に書いた「先手の得が活きそうな形」についてもメモしておきます。実戦で指されて困った形です。

f:id:honey1728:20170217040355p:plain

銀対抗から、某本に「クロスファイア」という謎のネーミングがなされている形へ。一時期プロ間でかなり指されていた形の先後逆バージョン。

一手の違いというのは大きいもので、定跡なら上図で先手が▲3八金と上がる所ですが、その一手がもう指されていることになります。

f:id:honey1728:20170217040401p:plain

この一手は大きく、以下定跡通り進むと上図。丸々▲4八銀が入っている計算で流石に後手は持ちにくい。

というわけで、後手としては銀対抗から淡々と進められたら急戦策ではなく穴熊に組むべきなのかもしれません。超速銀対抗からの相穴熊、という数年前よく指されていた戦型になりますね。

 

この銀対抗の形は一手の差を活かして先手が工夫してくる場合が多く、後手としてはそれに対応する展開になるでしょうか。通常の超速の経験が大事になりそう。

 

 

載せ忘れていましたが、suimonさんのブログに対先手中飛車の角道を開けない急戦についての解説があります。ご参考まで。

www.fgfan7.com

飯塚流と後手超速 02

今回は後手超速と呼ばれる形について。

f:id:honey1728:20170217030206p:plain

まずは直近の例を紹介してみます。菅井-澤田(C1)より。

居飛車の狙いが綺麗に実現した例だと思います。

上図以下▲7八銀、△5二金右、▲2八玉、△3二玉、▲3八銀、△4二銀、▲6六歩、△7五歩で開戦。

f:id:honey1728:20170217030208p:plain

先手に早めに▲6七銀と上がられた場合は△7二飛などで対抗するのでしょうか。

以下長めに進めますが、▲6七銀、△7六歩、▲同銀、△7二飛、▲6七銀、△7四飛、▲7八金、△1四歩、▲1六歩、△7五銀、▲6五歩、△7三桂。

f:id:honey1728:20170217030224p:plain

居飛車としてはかなり分かりやすい手順で、淡々と組んで理想形の完成。

以下▲5六飛、△7六歩、▲6八角に△3四歩がやはり手順。角を引かせてから△3四歩と突ければ成功と言っていいでしょう。

f:id:honey1728:20170217030250p:plain

先手としては動くしかない。

本譜は▲7七歩、△同歩成、▲同金、△6五桂、▲7六金と捌きに出たが、△同銀、▲同銀、△4五金、▲6六飛、△5五角、▲6五飛、△7六飛、▲7七角、△同角成、▲同桂、△5六銀、▲8五飛、△7七飛成で後手銀得の分かれ。

以下は丁寧な指し回しで後手の制勝。後手の狙いが実現した例。

 

先手の後手超速への対策は、本譜のように▲6六歩と突く形と、▲6六銀で対抗する形と、そもそも▲5五歩を突かずに構える形がある。それぞれプロの実戦例があるので、紹介していきたいと思います。